料金設定ポリシー

2022年、世界中で猛威をふるう新型コロナウイルスと、それに伴う半導体不足と関連産業への打撃があらゆるところへ波及し、弊社も少なからず影響を受けています。

短期間で終わればよかったものの、3年が経とうとする 2022年末現在も先の見通しがたたず、状況が改善しない中でもがいていますが、苦渋の決断としてお得意様に料金改定をお願いする運びになりました。

創業から 30年以上、大きな料金改定がなく、一番昔からお付き合いさせて頂いているお得意様だと 1990年にお見積もりさせて頂いた金額のまま、受注を続けていました。


▲1990年当時の帳票はアナログ(ワープロで作成)だったのですが、初代電子化システムで作成した古い帳票が残っていました

料金設定の難しさと、企業努力について考える機会になったので、お得意様とも共有できればよいと考えて、弊社の料金ポリシーについてかんたんにまとめたいと考えています。

エックス線漏えい線線量測定、などという業務は日常生活ではまず聞くことのない特殊な作業なので、料金と言われても相場観が無いと思います。これは業界関係者でも例外ではなく、日常的に医療機器の取り扱いを行っている方でも持ってないと思われます。(相場観のヒントは最後に書いています)

そんな中で、弊社がお引き合いを頂いた際に、「1回の測定料が○○万円です」とお伝えすると、そんな安い料金で本当にやれるの?と驚かれることがあります。弊社としては徹底したコストダウンを行った上で、最低限の利益だけで料金を設定していますので、正直、この反応を頂くと企業努力が認められたを実感し、冥利に尽きます。

コストダウンの具体例

しかし口先ではコストダウンというのは簡単ですが、実際に何をやっているか、ということを具体的に挙げられる企業は意外と少ないのではないでしょうか。

小手先のコスト意識、例えば仕入れは高いものより安いものを選ぶ、などは誰でもできることですし、正直、それほど料金に反映されるほどのインパクトのあることではないので割愛します。

弊社のようなビジネスで最も効いてくるのは、ずばり、人件費です。ここのインパクトが大きく、人件費を抑える以外にコストダウンは考えられないと言うほど重要な要素です。

ただし、ここで勘違いされると困るのが、社員を安い給料で雇っているとか、残業代を踏み倒しているとか、そういう意味ではないということです。従業員にはきちんと給料を支払った上で「利益につながらないことを極力やらない」ということを徹底して、無駄をなくしています。

秘訣は牛丼屋モデル

私はこの弊社のポリシーを、メニューが牛丼だけの牛丼屋と同じやり方だと考えています。並盛り、大盛り、特盛は選べるがそれ以外のメニューはない。好みに合わせてつゆだく、ねぎだくはお受けするが、それ以外の料理はお断りする。豚丼もすきやき丼も作らない。仕様の決まった大量生産品を作る考え方を業務に展開し、業務を単純化することで無駄をなくし、それを料金に反映することでワンコインで牛丼を提供することに徹底しています。

ワンコインで食べられる牛丼のような大衆食堂以外にも、レストランの選択肢はたくさんあります。イタリアンのフルコースを食べようと思えば、牛丼の何倍かの価格になります。弊社はイタリアンのフルコースを否定するつもりはありません。それは食べたい方の好みです。そして、イタリアンのフルコースを提供する店なら、弊社以外にもあります。

しかし、ワンコインの牛丼を出し続ける店は、弊社の商圏では弊社しかないという自負があります。それはたかがワンコインの牛丼かもしれませんが、それを実現するためには目に見えないノウハウが詰まっているからです。

意外と真似できない牛丼屋モデル

弊社のビジネスをみて、これなら真似できそうだということで業界関係者が見様見真似で同じ業務で参入してくることがあります。実はけっこうな頻度で起きています。弊社でビジネスモデルを学んでから退職して独立開業した方も居ます。

新規参入のライバル社としては、まずは顧客を増やしていかないといけないので、単純な手法ではあるものの、弊社より安い金額を提示する、という方法で営業を掛けます。弊社のお客様の中にも、安いほうがいいからということで乗り換えられるお客様も一定数いらっしゃいます。弊社にご相談があってもお引き止めはしません。お得意様からしたら、委託する業務なんてのは少しでも安ければ助かるわけです。

しかしそもそも、先に述べた通り、弊社の料金はコストダウンを徹底した上で薄利多売を前提として設定していますので、形を真似て新規参入したライバル社が、弊社より安いコストで業務をできるわけがないことは自明のことです。弊社より高いコストに、弊社より安い料金、これはつまりパイをとるために完全に赤字で請け負っている状態ですから、資金があるうちはなんとか続けられても、そのうち運転資金が尽きて撤退します。

ライバル社が撤退すると、お得意様はまた弊社に戻ってこられますので、この手の新規参入と撤退を間接的に知ることとなります。実は、正当な理由があって弊社より安い料金で請け負っているライバル社もありますので、それは後で紹介します。

歓迎してるライバル社の参入

弊社はライバル社が弊社と同じ業務に参入されること自体は歓迎しています。お得意様にとって選択肢があることは良いことですし(選択肢のある中で弊社を選んで頂ければよりうれしい)、場合によっては業務提携も可能だからです。よって、新規参入のライバル社が安い料金を提示してきたからと言って、さらに安い金額で対抗するということは一切やりません。「牛丼をワンコインで出す」という単純な業務を徹底することが弊社の強みなので、他店の出現でメニューを変えるようなやり方は、弊社のポリシーに反するからです。

実は同業の事業を始めたい、という方に対して弊社は門戸を開いていて、ご相談頂ければノウハウを含めて伝授しています。弊社で修行(もちろん、修行中は社員として給料も払います)して独立した方も何名か居ます。見様見真似で参入して撤退していくだけでは誰も得をしません。参入を検討されている方は、ぜひお声がけください。継続できるビジネスの手法を惜しみなく教えます。

もし継続して弊社より安く請けられる仕組みを構築されるライバル社が実現するなら、弊社は事業を委託することもできます。要するに、案件ごとに下請けに出すことができます。下請けであれば弊社は実働が無いので伝票代で利益を出すことができます。逆の立場で、弊社が安く仕事できることをうまく活用し、もっぱら下請けとして手配頂く代理店さんが何社もあります。実は弊社で請けてる仕事の 3分の2 はこうした代理店さんからご依頼いただく仕事です。(どこの業者さんに頼んでも、現場に弊社が参上するのはこれが理由です)

薄利多売モデルの弱点

しかし、そんな「ワンコインの牛丼屋」の努力が及ばない自体が起きました。冒頭で触れたように、新型コロナウイルスのまん延です。

牛丼モデルのキモは単純なものを大量生産して薄利多売することです。「薄利多売」はセットで成り立つことで、「多売」が欠けると「薄利」が成り立たなくなります。

いつまでも牛丼屋の例えで恐縮ですが、弊社ができることは入店されるお客様に牛丼を盛って提供することです。これはカウンターがひっきりなしに埋まっていて、はじめて成り立ちます。しかし新型コロナウイルスの影響が広がってからは、カウンターに空き席がでるようになってきました。

牛丼を盛る店員はアルバイト従業員だとしたら、店は時給いくらで雇っています。牛丼の売上が多かろうと少なかろうと、店は約束したアルバイト代を払うことで雇用が成り立っています。

これはうちのような正社員の従業員でも同じで、会社では売上とは関係なく、会社と社員の間で取り決めた給料を支払います。業務が暇になるからといって、給料を減らすことはできません。忙しいときは残業代やボーナスとして給料を増やしますが、減らす方はどれだけ減っても基本給以下になりません。

弊社の業務では原価の大半が人件費です。人件費はほとんど固定で決まってくるものなので、それを受けている案件で均等割する、という考えで料金を設定します。(販売業のかたからすると、人件費は原価に入らない、というご指摘もあると思いますがわかりやすくするため弊社のようなサービス業では人件費も含めて原価と呼びます)

外した賭けと負の遺産

新型コロナウイルスの流行前と比較して、案件が半分になると 1案件あたりの人件費を含めた原価は約2倍になりますので、利益を据え置いたとしてもほぼ 2倍の料金を設定しないと成り立たなくなってきます。

弊社も営利企業ですのでそこは常に計算しています。案件が目に見えて減ってきたときは、短期で持ち直すだろう、というほうに賭けて、赤字分は金融機関からの借り入れで対応することにしました。実は弊社は平素、金融機関から借り入れを行っていません。いわゆる無借金経営を続けていました。もちろん、弊社は金融機関から見れば安定して売上のある優良企業ですので、金融機関から常に有利な条件(金利が低い)で借り入れを行うことができます。

金融機関から借り入れをするということは、その対価として金利を支払います。これは金融機関の利益なので当たり前です。弊社が支払う金利は、コストという形で料金に転嫁されます。つまり、金融機関の借り入れを行えばキャッシュフローに余裕が出て経営はラクになりますが、最終的には料金に上乗せすることになります。金利コストはけっこう大きくて、例えば運転資金のために 5,000万円を借り入れて 7年で返済するとき、1案件あたりの金利負担は 700円ほどになります。料金に反映させると、3%以上の値上げに相当します。これは前述の、牛丼をワンコインで提供するポリシーに反するので、無借金経営の形態をとっていました。

すぐに事態がもとに戻れば、借入金を返済して終わりという単純な話だったところ、ご存知の通り新型コロナウイルスの影響はいまだ解消せず、弊社の借り入れによる赤字負担も無視できない規模になってきています。

案件の件数自体は少しずつ戻してきているものの、もともとの利益がギリギリなため、借り入れの返済を考えると余裕はありません。ワンコインにこだわってやってきたところを、苦渋の決断として 600円にせざるを得ない状況まで追い込まれている、それが冒頭にあった料金改定につながります。

経営判断として、案件が減った時期に、相応分の負担をお願いするということで 2倍の料金を請求していればいずれワンコインに戻すこともできたかもしれません。しかし弊社が案件減少は短期間で終わるだろう、という賭けを外した結果の料金改定ですので、今後もお付き合い頂けるお得意様に結果的に負担をお願いする形となって、本当に歯がゆい思いです。

料金改定の難しさ

また実務面でも、創業来30年以上料金改定を行ったことがないため 7,000件を超える弊社のお得意様すべてに料金改定のお知らせをする、という業務を行う余裕がない、という現実もありました。

牛丼をワンコインで提供するために無駄を排除していますので、こういったイレギュラーの業務に対応する余裕が無いのです。通常業務の合間を見つけてお知らせをするということで実際に動き出してみたところ、いつもお引き合い頂いているお得意様だけに重点的にお知らせするだけでも、半年以上かかることがわかりました。2022年10月から順次、お知らせを進めています。

2022年12月までに、約3分の1 のお得意様にお知らせすることができました。料金改定というシビアな内容ですので、当然、反発も予想され、あらゆるパターンを事前にシミュレーションして的確にご回答できる体制を整えています。しかしうれしい誤算と言うか、実際に料金改定をお願いしてまわったところ、新料金にご納得いただけています。弊社が常にギリギリの料金設定で努力してきたことが評価されていると感じました。直接的に料金改定に否定的なご回答だったのは、いまのところ 1件だけです。もちろん、静かに失注しているケースもあると思うので、100% 受け入れられたとは思っていませんが、目に見えるほどの受注の減少はないので、概ね、合格点としています。

ロードプライシング制度の導入

2022年11月からの料金改定では、弊社側から一方的に値上げをお願いする形ではなく、ロードプライシング制度を導入しました。弊社の業務ではどうしても繁忙期に案件が集中し、この繁忙期に対応するために体制を維持しないといけないため、これがコスト高の要因の一つとなっています。先に述べた通り、人件費は固定で必要です。そして人件費は一番繁忙期になるときに対応できるリソースで決まるので、なるべく平滑化するとコストを下げることができます。

弊社からは今後も繁忙期での作業をご希望される場合は値上げとなり、逆に時間の融通をご理解いただける場合はお値引きする、という料金体系を提示し、お得意様に選んで頂けるようにしました。

もちろんお得意様もご都合があると思うので、どうしても繁忙期でしか対応できない、というお得意様も多いと理解してます。その逆で、時間を弊社の都合に合わせて頂ける場合、結果的にコストを下げることができますのでその分を料金に反映してお値引きとしています。

ちょっと昔話

弊社が長年のノウハウの積み重ねでいまの料金でサービスを提供できていますが、これは当たり前にやろうとしてやれることではないと自負しています。もちろん努力だけではない、運が良かった点もいくつかあります。弊社が創業した頃、同業他社は個人事業の方しか居ませんでした。そこに弊社は会社組織を整えて、会社に電話をすれば応対する、といういまでこそ当たり前ですが創業当時の個人事業ではあまりやってなかった仕組みを作りました。代表電話を置く、ということです。

弊社が創業した当時、1990年はまだ携帯電話はほとんど普及していません。営業マンならポケベルを持ち歩いており、公衆電話から会社に折り返して要件を聞く、という時代です。個人事業でやってる方だと代表電話を置いても現場へ行ってしまうと誰も出られない(これに対応するため、テープに録音する留守電という仕組みがありました)ので、取引先とのやり取りもままならないということもあったでしょう。弊社はそんな中、個人事業の業務だったエックス線漏えい線線量測定を「会社組織としてやる」という仕組みを整えたことから、取引先に評価されてほぼすべての国内外メーカ様から引き合い頂くようになりました。

もちろん、現場にいかない(直接利益を生まない)電話番の必要があるので、いまの最低限のコストで運用するポリシーに反し、高コストの体制です。しかし、お得意様から何千万円という金額で受注しているメーカ様の営業マンの立場にたつと、いつ連絡がつくかわからない個人事業主より、少し料金が高くなっても確実に発注できる弊社が使いやすかったのです。複数のメーカ様の案件を集中して受けられるので、結果的に作業の効率が上がり、電話番に掛かるコストを差し引いても利益が出るようになりました。

ここまでの経緯は狙ってやったことではありません。創業メンバーがたまたま企業出身者の脱サラだったので、会社で電話を受けることは当たり前にやらないといけないという発想が元になっています。結果的にはこれがコストダウンの大きな要因となり、いまに至ります。

移動コストが最も高い

実は弊社の業務では、案件自体を遂行する時間より、移動の時間が大半を占めています。移動中は利益はまったく出ませんが、人件費という観点では単位時間あたりにコストは同じだけかかってきます。

おおよそ、業務の 6~7割はお得意様の間を移動しています。この移動にかかる時間を如何に減らすか、がコストダウンの観点から重要です。地理的に近いところを重点的に訪問できれば、移動コストを下げることができます。ここで、ほぼすべての国内外メーカ様にお取引頂けるメリットが出てきます。

商圏は決まっています(弊社の場合は、愛知県、三重県、岐阜県だけ)ので、案件が増えれば距離的に近いお得意様の案件が連続する確率が増えてきます。案件が少なかった頃は、お得意様間の移動が 100km を超える、200km 近い移動(渥美半島の先、伊良湖岬から伊勢まで、と言えば距離感が伝わるでしょうか)もザラでしたが、いまでは平均して 3~40km ごとの移動で済んでいます。これくらいの移動距離なら、1時間も見込めばこなせるので業務に占める移動の割合を減らすことができています。1時間の移動を伴うので 1時間分の人件費をご負担ください、と各個にお願いするわけにはいきませんのでこれは均等割で料金に含んで計算しています。

だいたい 2人1組のチームで、1日に 4~5件ほどのお得意様先へ訪問します。4件なら実作業時間が 35~40分 x 4回 = 約2.5時間、移動時間が 1時間 x 5回(最後に会社に戻る区間が必要なため) = 5時間くらいです。具体的な数字でみると、いかに移動時間の占める時間が長いかが、ご理解頂けるかと思います。

余談ですが、たまに高速代がもったいないから会社から下道を使えと言われている、というサラリーマンが居ます。もちろん、それはその社のポリシーなのでそこを否定するつもりはありません。弊社の場合は逆で、下道を使って時間が掛かることこそ、最も高コストだと考えているので、たとえ 1区間でも高速道路を使えるなら、高速道路を使うように社員に通達しています。信号待ちを回避するためだけに、高速道路に乗ることもある、くらい徹底的に時間優先でやっています。(マニアックな話で恐縮ですが、東新町入口から吹上東出口、距離にして約3km弱だけでも乗ります)

さらなるコストダウンのために本社移転

創業当時の非効率的な業務から計算した料金設定だったので、コストが下がったことで利益が出るようになった時期があります。この頃は名古屋の市内の一等地今池でビルを借り、業務を拡大しようとあらゆることをやろうとしていました。牛丼屋の例えに戻ると、駅前に店を構え、牛丼だけではなく豚丼やすきやき丼もメニューに載せていました。

しかしそれは弊社の本当の強みである、牛丼一本のメニューに特化して大量生産薄利多売モデルで安価に提供する、という本筋からは離れてしまいます。弊社には基本的に来客がありません。ほぼ 100%、お得意様のところに訪問する業務です。受付が常駐しているような市内の一等地のビルに会社を置いておくメリットはあまり無いのです。自社の社員しか出入りしないのに、大理石のエントランスは不要です。

いま弊社が名古屋市瑞穂区という、一般的にはあまり会社の立地するところではないところで業務を行っているのは、こうした業務の特性を活かせる場所に移転したためです。移動の大半は、高速道路に乗るところから始まります。移動コストを下げたいので、会社は高速道路の出入り口から近いところに置く必要がありました。

名古屋高速の出入り口をみたとき、便利な入り口がいくつかあります。都心だと丸の内、東新町が最たるものですが、少し離れて黒川、吹上も便利です。丸の内や東新町は一等地なのでビルを借りるとコストが高くなります。吹上もやはり便利なのは誰もが知っているので需要が多く、安く使えそうなところは見つかりませんでした。

そしていまの場所、堀田の出入り口から近いところに、廃業した印刷工場を見つけたのでここに会社を移転しました。築30年を超える工場で、お世辞にも立派な建物ではありません。しかし、先にも述べた通り、弊社に来客はほとんど居ません。社員が不便なく業務できれば良いので、見てくれは二の次です。高速道路への出入りが便利になったので移動に掛かる時間が減らせます。毎日のことなので、積み重ねでものすごい効果になります。副次的な効果として、一等地今池のビルから比較すると、賃料だけで半分くらいになりました。

今池のビルからは、吹上入り口か春岡入口へ向かってたのですが、渋滞しがちな道を使うこともあって、高速道路に乗るまで 10分は掛かっていました。出口は東新町出口を使うことが多かったのですが、こちらは 10分では戻ってこられません。いまは堀田入口まで、5分も掛かりません。堀田出口からも 5分弱、呼続出口からもほぼ同じくらいで戻ってこれます。たったそれだけのことですが、1案件あたりで 500円ものコストダウンにつながっています。

弊社がコストダウンに務める一方で、物価高がありますのでトータルでのコストは上昇してきます。しかしコストダウンを行っていたので、相殺してなんとか続けていました。

こうやって数百円単位ですらコストダウンを積み重ねてきたところに、新型コロナウイルスの影響は次元の違うレベルです。元々、原価率 50% でやってるところに案件が半減すれば、原価率は 100% に跳ね上がります。具体的な数字は挙げられませんが、一番ひどかった時期(1年間)に案件あたりの原価率は 110% を超えました。お得意様ごとに 6,000円前後の赤字です。いまは件数もだいぶ戻ってきていますので、これほどの数字になることはありませんが、原価も上がってしまいましたので原価ギリギリである状況は変わりません。

業務委託するときに使える相場観

弊社のエックス線漏えい線線量測定のようなあまり一般的ではない業務の相場観について、見当を付けるヒントがあります。いまの日本では従業員一人を雇っていると、諸経費を含めて営業日1日あたりで約4万円が掛かります(税金、保険、年金などは会社も支払っていますし、直接利益を生まない人事などの間接業務も発生するので、人件費は本人に支払われる給料の 2倍以上、概ね 3倍程度が掛かります)。1日の勤務時間は 8時間なので、時間あたりに換算すると 5千円です。

弊社にご依頼いただく作業は現地での作業と作業後の報告書の作成業務をあわせて 1時間弱、お伺いするために移動するための時間が平均して 1時間ずつですので、概ね 2時間分の実働が発生します。時間あたりに必要となる 5千円 x 実働2時間 x 人員2名ですので、合計2万円が実費での人件費となります。

これに加えて移動に掛かるガソリン代(これは 300円程度の微々たるものですが)、高速代(平均で案件あたり 1,200円程度)、営業車のリース代(平均で案件当たり 700円)、その他備品代など諸経費に掛かるコストなど案件(弊社では 1部屋単位で計算)で均等割した約1.5万円が掛かります。

これらの経費を積み上げた上に、最後に会社として必要となる利益(ここは事業内容によりますが、安定して営業するには 30~50%程度が必要)を上乗せして、請求金額を算出します。利益が 30% なら原価率 77%、利益50% なら原価率 67% です。余談ですが、営利企業では利益の 35% ほどは納税しますのでそのまま手元に残るわけではありません。

弊社のような作業員がお伺いして業務を行う場合は、他の業種でも概ね同じようなコスト感なので、作業員1名で 1時間あたり 5千円、移動コストも同額、案件頭割りの諸経費が都度 1.5万円前後、というコスト感を持っていれば、これに利益を載せた程度の請求が発生してくることを予測できます。特殊な専門作業を除けば、1時間の現地作業で 3~5万円という金額が多い内訳はこのような数字が根拠と考えて良いと思います。もちろん、間に仲介する方(医療機器店、代理店、薬卸など)が入っているとそこでもそれぞれ伝票代が加わるので、もっと高くなることもあります。

算出根拠がこの通りですので、弊社の金額でもなんとかギリギリの利益を確保できています。

営利事業ではないライバル

ここまで数字を出せば、誰がどう請けても料金の下限はある程度見えてきます。しかしたまに、他社から圧倒的に安い金額を提示されたけど、どういうことだ、とクレームが入ることがあります。

これはもう決まったパターンなので弊社も把握しています。ずばり、各地域医師会が行う事業です。

医師会というのは開業医で作る寄り合い組織で、営利企業ではありません。会員から会費を集め、それを原資に会員全体の必要とすることを事業としてやっています。

極端な場合は、ゼロ円という医師会もあります。もちろん誰かが動く以上、経費が掛かるのでゼロ円でやれるわけはないのですが、そこは会費として集金したものから充当していますので、間接的には費用負担しています。内訳が明かされてないだけです。

ゼロ円の場合はむしろ良くて、誰がみても非営利事業だとわかるからです。弊社からすると都合が悪いのは、「一部負担だけ」請求する医師会です。実はこれ、ものすごく多いのです。

要は、コストは弊社と似たような算出で掛かってくるものの、一部(例えば 1回あたり 1万円だけ)を負担してください、というパターンです。残りは会費から充当しています。

これを、「あっちは 1万円でやれると言ってきた」と弊社にクレームされるわけです。

ちなみに弊社が逆に、各地域医師会様から下請けとして業務を請け負うこともあります。弊社からは医師会様に請求していますが、それが全額、お得意様の負担なのか一部が会費から充当なのかは知りません。

新見積書に記載している項目

弊社の業務のような実態のわからない作業で、いきなり金額だけを伝えられても算出の根拠がわからないので判断しかねる、というご指摘を以前から頂いていました。弊社としては、ここまで書いた通り、必要となるコストを計算しています。しかし、必要なコストを積み上げて算出していく、というのは企業経営者特有の考え方かもしれません。

そこで 2022年10月以降に発行している新しい見積書には、「基本料・出張交通費」、「現地作業費」、「測定料」という 3つの項目にそれぞれ内訳を書いています。

このうち、「基本料・出張交通費」が移動に掛かる時間あたりの人件費、ガソリン代、高速代、営業車リース代など実費を原資とした数字(原価)です。弊社からの距離に応じて金額が違うのはそのためです。

「現地作業費」はお得意様先での滞在時間に掛かる時間あたりの人件費を原資とする数字(原価)です。

そして、その他の諸経費と弊社で必要とする利益を、すべての案件の部屋数で頭割りしたものを、「測定料」(利益含む)という項目にしてあります。原価は前述の通りですので概ねの利益も計算できてしまいます。

測定料の項目は変動もあるため、すこし余裕をもって設定してあるので、最後に調整として値引きを入れて金額を算定します。

種明かししてしまうこと

本来、こうしたノウハウ、ある意味では営業の核心とも言える料金算出の裏を明かしてしまうことはリスクがあります。それでも、弊社がギリギリの料金設定で業務を続けていける理由があることを知っていただくことは、必ずしもマイナスではないと考えています。

ライバル社がうちのワンコイン牛丼モデル(結果的に 600円牛丼になってしまいましたが)を真似してもらうことは、むしろ大歓迎です。いっそ、会社まで来て頂ければもっと詳細にお話してもよいと思っています。

実を言うと、本当の核心はここに書いていません。そこを隠すつもりはなく、むしろ他の業種でも使えるノウハウだとすら思ってるので機会をみて公開したいのですが、ここで書いた、主に人件費に焦点を当てたコストダウンの何倍もの文量になってくるので割愛しました。(→ さらなるコストダウンのノウハウ、社内システムへの投資 について公開しました)


Dr.Net Survey